RADWIMPSサブスク解禁ということでこの機会に発表当初から凄く良く出来ている曲というイメージのある「泣き出しそうだよ」を分析してみよう、という試みである。
RADWIMPS『ANTI ANTI GENERATION』2018年
泣き出しそうだよ feat あいみょん RADWIMPS MV
まず曲の構成を考えた場合、作者が意図していることは緊張感の持続だと思う。
バンド演奏のイントロからスローなピアノ音が聴こえてきたところでまず掴まれる。この曲はAメロ⇔サビが転調してくり返すことで成り立っており、転調は「ハッ」とさせられるのでその都度覚醒する思い。
歌詞の流れとしてAメロは淡々とサビは捲し立てるように言葉多めで、静⇔動のくり返しにより集中力が途切れずBメロはスタッカート、間奏も転調で休まる部分がない。
ずーっと耳を惹きつけられたまま終始する構造を持っているのだ。
あいみょんの起用も功を奏していると感じる。
彼女の声の低音と野田洋次郎(ボーカル)のバランスは絶妙でいわゆる女性っぽい透明感タイプの声だとこうは上手くいかないのではないか。
歌詞の中の女子言葉、男子言葉という区分で聴くと女子の心情を歌っているのに男子言葉を感じさせる部分があり、これがあいみょんのキャラなら許されるというか。「泣き出しそうだよ」というタイトルからしてあいみょんに嵌まっているような気がする。ちなみにこの曲はそもそも野田とあいみょんが遊びでセッションしているうちに出来た曲だそうで最初から彼女が想定されていたという訳だ。
次は歌詞の内容について。
元々つき合っていた男女が今はそれぞれ別の恋人がいて、にも関わらずお互いにお互いへの想いを引きずっている状況が語られている。別れた後、友達でいる場合もあるだろうけどこの曲の二人は詞の内容からして連絡は取り合っていないと推測される。
そんな中でポイントとなるのは、
あいみょんがソロで歌う【そろそろ眠らないと】
野田がソロで歌う【どうやって眠るんだっけかな】
ラストフレーズ、野田とあいみょんが同時につぶやく【眠らないと】。
ほとんどの言葉は彼(彼女)に対する想像と葛藤で占められているのに上記に挙げたフレーズは直接の意味としては日常思考であり、明らかに他のフレーズとは異なる。
二人がそれぞれ切ない気持ちを抱えているという総体は見えているのだがもう一歩踏み込むと、ある帰結点がイメージ出来る。二人の意識下に心境の共有があるのではないか、と。
明日、仕事(あるいは学校)でもう寝なきゃいけないのにどうしても気になる相手の事を考えてしまう、という状態に陥ってしまっている様子をあえて歌詞の中に入れることは二人が共鳴し合っていることの証明になる。
奇しくも作者の野田洋次郎自身がこの曲について何気なくつぶやいている。