映画『PERFECT DAYS』

休日、『PERFECT DAYS』を観て来た。

ドイツのWIM WENDERS監督を招いて日本で製作されたこの映画、実にしみじみと味わい深い、いい映画だった。THE ANIMALS、LOU REEDPATTI SMITH等、クラシックロックの曲がふんだんに使われているということでその興味から観てみたのだが作中、曲が収録されたカセットテープがストーリーに絡んできたりして上手い使われ方をしていた。

役所広司さん扮する主人公は東京都内の公衆便所を清掃して回る仕事をしていて彼が運転する青色の軽バンの中でカセットテープで聴いているのがクラシックロックなのである。まず、そういう音楽的趣味の男であるという設定からして自分などは主人公に容易に感情移入できた。若い女の子が二人、別々の場面で登場して主人公が聴いている音楽に興味を示しカセットデッキにテープを挿入しようとして入れ方を間違えるという描写があって、ここら辺りは2023年公開の映画であることを実感させられる。

この映画を観た人は主人公が毎日生き生きと仕事していることに気付くだろう。これこそがこの映画のポイントで主人公の職業や作中登場するダウン症の青年にしろ世間一般の感覚からは低く見られがちというか日本は制度としてのヒエラルキーがある訳ではないのに主人公の妹が兄に向かって「まだトイレ掃除なんかやってんの?」と問いかける、こういう感覚が一般的であるのに対しこの映画はその辺を非常に温かい視線で肯定的に描いている。これは特筆すべき点であり1970年代の日本映画だったら『十九歳の地図』(映画は傑作だけど)みたいになるところだ。

作中で唯一疑問なのはラストシーンだろうか。製作者サイドはどうやら解釈は観客に委ねるということらしいが単純にNINA SIMONEの「Feeling Good」に感動したんじゃないかと思った。自分は短絡的な感性の人間である。

NINA SIMONE『I PUT A SPELL ON YOU』1965年


Nina Simone-Feeling Good(Official Video)