WAYNE SHORTERのバラードを聴く

WAYNE SHORTERといえばポップス耳の自分からしたらJONI MITCHELL『Mingus』とかSTEELY DAN「aja」辺りが馴染み深いところだが今、正に旧譜を新曲の様に聴いていた最中だっただけに亡くなられたのは非常に残念なことだった。改めてWAYNEの足跡を振り返って見ると偉大なるジャズ・ジャイアンツ、巨匠墜つ、という感じがする。しかし亡くなられた後の報道、追悼文を見ていると意外な程、触れられていないのが彼がスピリチュアルな志向性の人だったという点(見るべき媒体の記事を見ていないだけ?)である。なぜこんな事を言うのかというとそれこそがWAYNEの創作における“肝”だったと思うからである。きっかけは彼がHERBIE HANCOCK創価学会池田大作氏と共に『ジャズと仏法』という本を出しているという事実を知ったことから始まる。彼の談話によると少年の頃、空の彼方宇宙から聞こえてくる音をサックスで表現する為に練習しているうちに自分のスタイルが出来上がっていったそうな。プロになって自分のリーダーアルバムを作るようになってもずっと神秘的な事柄をモチーフとして掲げていてWEATHER REPORTというバンドは宇宙からの音を伝える伝達装置だった、とまで言っているのだ。定型の方へ流れて行かないフレーズ、予定調和を覆すようなWAYNEのプレイはこういうところに起因しているのではないだろうか。宇宙からのテレパシーに従って演奏しているだけだという彼の主張である。定型の方へ流れて行かない予定調和を覆す感じはバラードが分かりやすい。例えば映画『タクシードライバー』のテーマのように都会の闇を感じさせるようでいて実は全然別物と思えて来たり。一筋縄ではいかない奥深い表現である。

WAYNE SHORTER『“Speak No Evil”』1966年


Infant Eyes(Remastered1998/Rudy Van Gelder Edition)

WAYNE SHORTER『ADAM'S APPLE』1967年


Teru(Rudy Van Gelder Edition/2000 Digital Remaster/24Bit Mastering)

WAYNE SHORTER『THE SOOTHSAYER』1979年


Lady Day(Rudy Van Gelder Edition/Digital Remaster/2007)

無宗教でスピリチュアルな事柄には興味がない自分にとってWAYNEの心の中までは分からないが彼の作った音楽が素晴らしいのは理解できる。極端に言うとミュージシャンはどんな人格の人であっても生み出された音楽さえ良ければそれでいい。だから来月に予定されているTHE1975のライブは俄然、楽しみなのである。