コロナ禍の前夜

去年10月、小西康陽さんのソロプロジェクト、ピチカート・ワンのライブから始まった流れ→11月、田島貴男さんの『ひとりソウルショウ』→11月、野宮真貴さんの『野宮真貴ピチカート・ファイヴを歌う』→今年1月、オリジナル・ラブ主催のライブイベント『LOVE JAM』vol.5、コラボアーティストがコーネリアス

何か点が線になって繋がるような流れを覚えた。

 

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PIZZICATO ONE『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』2020年

今年出たピチカート・ワンのライブアルバムは去年、東京と大阪で行われたライブの“いいとこどり”という感じだろうか。曲にまつわるエピソードとか曲を書いた時の心境など一曲一曲について小西さんのMCがふんだんに盛り込まれていたライブだったが作品化されるとばっさりカットされていてしかしそれも仕方なし、という印象。一つエピソードを紹介するとピチカート・ファイヴの頃から小西さんは親父さんに「歌わないのか?」といわれていたそうな。親としては息子の歌が聴きたい、と。そういえばピチカート・ファイヴは随分初期の段階から“小西さんが歌う”というアイディアはあって『女王陛下のピチカート・ファイヴ』の

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 PIZZICATO FIVE『女王陛下のピチカート・ファイヴ』1989年

「女王陛下よ永遠なれ」がそれなのだが、それに関連してかどうか...

その昔、場所が全く思い出せないけど小西さんがDJで出演されていたクラブイベントでかなり夜も深い時間帯に出番を終えた小西さんがフロアに出て来られてすかさず話しかけたことがあった。自分が「『女王陛下のピチカート・ファイヴ』が一番好きです」というと小西さんはお酒の匂いを漂わせながら一言お礼を述べられた。当時はまだ真貴さんとピチカート・ファイヴ現役の頃であり、世界で一番興味のない話題を素人から振られても凄く丁寧な口調だったと記憶している。

『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』はピチカート・ファイヴ全盛期であれば絶対実現しない企画だったろう。小西さんも大御所になられた、と思った。

真貴さんのライブは“SUNNY SIDEピチカート・ファイヴ”であって「今日はかわいい真貴ちゃんでいくの」といいつつ衣装換えを四、五回行いながらド派手に代表曲を全部やるというお腹一杯になる内容だったが曲の印象は小西さんのライブと変わらなかった。当然といえば当然なのだがピチカートの曲はそれだけメロディが強くはっきりしているということだろう。

 

そしてこの流れの締めくくりがオリジナル・ラブpresents『LOVE JAM』。

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コーネリアスのライブはゲストだから、というのではなくいつもやってるような内容でやり切ったあたりにこのイベントに対するリスペクト感があった。そしてクライマックスは“田島×小山田コラボ” 。自分はコラボ曲が「ORANGE MECHANIC SUICIDE」じゃないかと予想していて当たりだったがそれには理由があってその話しはまたいつかの機会にしたい。小山田さんはギターに専念して田島さん一人が歌う形に。たぶんオリジナル・ラブがメジャーデビュー前にやっていたバージョンだと思われ初めて聴くアレンジだったけど何だか感慨深いものがあった。演奏前、田島さんと小山田さんが同じステージに立って満員の観客がかたずを呑んで観守る様子が忘れられない光景となった。

先月行われた田島さんの『ひとりソウルショウ』は大阪なんばHatchというライブハウスに椅子を並べ人一人分の間隔をとって着席、声出し禁止。いつもならヒューマンビートを即興で作ってループさせながらの演奏だが今回はそれもナシ。ライブの前半と後半の間に“換気タイム”と称して会場の扉を全開にする休憩時間も設けられていた。

毎年1月恒例だった『LOVE JAM』も2021年は中止に。自分が観たピチカート・ワンのライブも『LOVE JAM』もここ一年位のことなのに遥か遠い昔のことのように感じられる。自分としてもエンタメ業界の興行がセンシティブに関わることは十分理解できる。今のこの状況下では当分の間、遊びに興じるための他府県への移動は制限されて然るべきだしもしウイルス感染した場合の周りへの影響を考えたら行動を控えるしかない。悲しい現状である。

 

今年の『ひとりソウルショウ』カバー曲はNICK LOWE「What's So Funny 'Bout Peace, Love and understanding?」。田島さんはリゾネーターギターでブルース調にアレンジしていた。

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 NICK LOWE『UNTOUCHED TAKEAWAY』2017年


Nick Lowe - What's So Funny About Peace, Love And Understanding

 

PIZZICATO ONE『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』からは無料で観れる動画がない。そこで小西さんがピアノ担当、前園さんのボーカルバージョンを。

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 前園直樹グループ『火をつける。前園直樹グループ第一集』2009年


前園直樹グループ/東京の街に雪が降る日、ふたりの恋は終わった。

 

小西さんが今回のアルバムで一番意識したという小坂忠とフォージョー・ハーフの『もっともっと』。このアルバムが実にいい。小西さんが雑誌で紹介したアルバムとか田島さんがFMラジオでかけた曲のアルバムを血まなこになって探すという行為は自分が十代の頃からやってたことで今も全く同じことをしている。自分の進歩の無さにあきれるばかりだ。

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小坂忠とフォージョー・ハーフ『もっともっと』1972年


小坂忠『 好きなんだから 』