2018年、新曲が聴きたい一番手として挙げるのがGUIRO。
『Album』2007年
1st『Album』の耳ざわりとしては混沌としていてデモに近いものという見方もあるかもしれない。もしメジャーを数多くこなしている手練れなプロデューサーがレコーディングを仕切ったら違う作品になるだろう。同じような志向性を持つ既出作がいくつか浮かぶがこの『Album』の前ではすべてが“洗練”に思えてくる。洗練されていることが悪い訳ではなく『Album』は自然にインプロヴァイズ、非整合性へ向かったと解釈でき、そのことが作品に凄味を与えている。驚愕すべきはこの作品がポピュラーミュージックとして作られていることだ。前衛とかアートな領域に一歩でも踏み込んでいれば掛ける言葉はない。そのことの証として「エチカ」という曲の歌詞にこんな一節がある。
【穢れ呼ぶ蜂蜜をもいだ林檎に垂らさないでくれ】
これは昔からある有名なカレーCMのイメージだ。
この「エチカ」が持つ仄暗さ漂う歌メロの美しさ。何度も繰り返し聴きたくなるのはポピュラーソングだからである。
この『Album』が発売以来自分の中で孤高の存在であり続けるのはその“自由さ”に他ならない。それは歌詞の言葉使いにも表れていて「誰~」という言葉の「だ」を「た」としているところに何か言い知れぬ解放感がある。音楽を志す者と“本物”を欲求するリスナーが共通して追い求める真性な世界観が朧気ながらも確実に感じとれる。脈々と語り継いでいかなければいけない義務を感じる“本物”の傑作だと思う。
彼らは2016年、9年ぶりに新曲を発表した。今年は活動が本格化することを期待したい。