2017年は印象深いLIVEが多かった。それもそのはず観たいものだけを選んで行っているので当然といえば当然である。その中でも特に良かったLIVEといえば4月に来日公演を行ったCORINNE BAILEY RAE。
背中がゾクゾクするような感動をLIVEの最中に何度も味わった素晴らしいステージだった。ホール会場で全員座ったまま静かに始まった演奏。どうなることかと心配したのは最初だけで最後には会場全体が熱気に溢れ全員が一人の女性に魅了されていた。
オーガニックと称されることが多い彼女、自然体で進行していくのかと思いきや、とどまることを知らないぐらいずっと身振り手振り動いていてギターを持ってもゆらゆら踊る、バンドメンバーのソロの間ステップを踏んで踊る、あるいは客席へ降りて行って手当たり次第にハグして回る等、オーガニック=自然体とは正反対、かなりのエンターテイナーぶりだった。調べてみるとCORINNEは幼少の頃、教会の聖歌隊で歌い、十代の頃はプロ契約一歩手前までいく程の本格的なバンド活動をしていたそうで自然と観客を盛り上げていく術を十分心得ている様子だった。
デビューからずっと彼女のファンだったがその音楽性はどこか捉え所のない印象もあった。メロウなスウィートソウル的要素もあればすごく内省的なフォークソングがあったりあるいはロック色の強い曲があったり...。
『CORINNE BAILEY RAE』2006年
『THE SEA』2010年
『THE HEART SPEAKS IN WHISPERS』2016年
しかし今回初めて観たLIVEで自分なりに謎が解ける部分があった。CORINNEには好きな(得意な)曲調があって、スローで始まる、あるいはすき間だらけの流れからメロウなグルーブ、歌メロへとつないでいく。そのメロウな部分というのは曲のクライマックスでありR&Bやスウィートソウル的な要素があってそれが核になっている。
CORINNEはデビュー当初ハードロックの伝説的なバンドLED ZEPPELINの「SINCE I'VE BEEN LOVING YOU」をLIVEで演奏していたことがあった。CORINNEとZEPとは一見意外な組み合わせだがこの「SINCE I'VE~」が彼女の好きな曲構成にぴったりな流れであることが今回のLIVEで気ずかされた。
LED ZEPPELIN『Ⅲ』(「SINCE I'VE BEEN LOVING YOU」収録)1970年
そしてCORINNEといえばあのウィスパーボイス。生で聴くと改めて素晴らしい歌声の持ち主、天性のシンガーであると確信した。
Corinne Bailey Rae - I'd Do It All Again (official video)
とはいえSNSではPAUL WELLERやESPERANZA SPALDINGと写真に収まったり、東京では映画『キルビル』のロケ地で喜んだりと同年代の一般女性と変わらない感覚も持ち合わせていることをうかがわせる。
そして何より一番印象に残っているのは彼女の笑顔。一曲終わるごとに見せるあの笑顔が今だ脳裏に甦ってくる。決して絶世の美女って風ではないけれど笑顔が最高に素敵な女性だった。